クリニックや中小企業で「魅力を伝える」取り組みは、どのように進めればよいのでしょうか。今回は食品工場の工場見学を活用して、パートスタッフの魅力を引き出した成功事例をご紹介します。
🔸工場見学案内の人手が足りない
ご相談いただいたのは、自然豊かな山間部にある食品加工メーカー。昔ながらの醸造法で味噌や醤油を製造しています。これまでは工場見学を社員が案内していましたが、予約が増えたことで対応が難しくなり、パートスタッフがガイド役を務められるよう育成したいという課題がありました。
見学者の希望により、3段階ほどの見学ルートがありましたが、これまでは案内役の知識や経験頼りで、マニュアルも原稿もありませんでした。
そこで、15分のミニガイドツアーをモデルコースとして作成することにしました。まず工場長にVIP向けのフルコース(60分)のガイドを行ってもらい、その内容を録音して原稿化。パートスタッフが無理なく話せる内容に絞り込みました。
🔸目から鱗!工場長のガイドツアーにお宝満載
このメーカーでは、豊かな自然を活かした昔ながらの醸造法にこだわり、日本の食文化を後世に受け継ぐものづくりをしています。
工場長のガイドには、日本の醸造や発酵食の伝統技術、和食の文化について、歴史や文化に根差した興味深いエピソードが詰まっていました。
「戦国時代、武将の強さを支えたのは良質な味噌だった。」
「『味噌がなくては戦ができぬ』と言われるほど、戦闘能力を左右する「兵糧」の中でも味噌と米が大事でした。」
「じっくり昔ながらの方法で時間をかけて発酵させた発酵食品は大豆・麹・塩のみで必須アミノ酸を豊富に含む健康食品だ。」
このような話をしながら、工場長の顔に笑顔が広がりました。
最初にこんな工場見学を受けていたら、パートスタッフの接客や試食品のご案内にも相当効果があったのではないかと思いました。
販売している商品だけでなく、食育や日本文化や歴史にも想いを馳せるお宝満載の時間でした。これを聞いたパートスタッフは、自社の商品が持つ価値を改めて認識し、目を輝かせていました。
また、一部のスタッフがガイド役としての適性を発揮。特に、元タレント志望だった若い女性スタッフが明るい声と積極性で短期間で役割をマスターしました。
🔸ガイドツアーがもたらす効果
ガイドツアーは、単なる業務の一環ではなく、自社の魅力を再発見する場でもあります。普段は縦割りで仕事をしている工場の職人さん、店舗の販売スタッフ、営業職も、工場見学を通して自社の魅力を再発見し、誇りを持って互いを尊重しながら仕事をするようになります。互いの仕事を理解し、尊重し合うことで社内コミュニケーションが向上します。
さらに、お客様にとっては製品の背景にあるストーリーを知ることで、商品への理解と共感が深まり、ブランドロイヤルティの向上につながります。
🔸SNS時代は、クリニックもガイドツアー
ガイドツアーは製造業だけの特権ではありません。クリニックでも、SNSで院内の案内を行うことで、患者さんとの距離を縮めることが可能です。
たとえば、以下のような動画が考えられます。
- 「〇〇の検査室ツアー」
- 「禁断の院長室見学ツアー」
- 「スタッフの昼休憩をご紹介」
こうした動画は特別なイベントがなくても作成可能です。オフの雰囲気や日常を公開することで親近感が生まれ、SNSを通じたコミュニケーションが活性化します。
🔸魅力発信を進めるためのアドバイス
SNSを活用する際には、無理のないスケジュールと明確なコンセプトが重要です。例えば、以下の手順をおすすめします。
- 発信の目的とターゲットを設定する
- コンセプトを決めてスケジュールを立てる
- 動画編集など専門的な作業は外注も検討する
特に中小企業では人手不足が課題ですが、無理なく続けられる形で取り組むことで、長期的な効果が期待できます。
まとめ
ガイドツアーは、自社の魅力を再発見し、それをお客様に伝えるための非常に有効な手段です。クリニックでも、院内の案内や日常を発信することで、患者さんとの信頼関係を深めることができます。
次回は、社長自らが広告塔としてSNSを活用し、ファンと信頼を獲得した事例をご紹介します。お楽しみに!